思い出1
[2024.09.27]
自分の最も古い記憶がなにかと聞かれれば、私ははっきり答えられることがあります。3歳の頃です。このクリニックの前の古家は、私が幼稚園の年少時に新築されました。それ以前は、さらに古い家があり、そこで生まれ育ったのです。その古い家での思い出になります。3歳の記憶なのですが、飼い犬のハナのことです。ある日の朝、ハナの反応が明らかに悪いのです。3歳の私が見ても、ハナに大変なことが起きていることがわかりました。ハナの大好物はちくわでした。当時の行基町には自転車屋さんのむかいに食料品が買えるスーパーがありました。今は変な交差点になっているので、広い歩道になっている位置にスーパーがありました。ハナはちくわが大好物だったので、私は大急ぎで母に伝えてハナのためのちくわを買いに行きました。買ってきたちくわをハナに差し出すと、ハナはゆっくり起き上がり、しっぽを振りながらちくわを少しだけ食べました。ハナについての最後の記憶であり、同時に一番古い記憶です。その後ハナは死んだはずですが、それ以外は覚えていません。古家が壊されて新しい家が建つまでの間は、国鉄伊丹駅前のアリオのあたりにあった祖父母宅で過ごしていました。そのころに次に飼うことになるモモがどこかからか貰われてきました。当初は子犬は2匹いて、モモとハナと名付けて飼っていました。幼稚園児の私は2匹の子犬を散歩させるのに毎日苦労していました。元気な子犬たちは幼稚園児には手に負えなかったのです。ある日一匹がよその家庭に引き取られていきます。その日のことをはっきり覚えております。犬を引き取りに来た人はモモとハナのどちらかを選ぶように言いました。犬をもらいに来た人にとっては、どちらの犬でもよかったから私が選んだら、もう一匹を持って帰ろうと思ったのでしょう。私はモモとハナのどちらかを選ばなければならないという大変な選択をさせられたのです。兄たちは学校や幼稚園に行っていたので私しか家にいなかったのです。モモとはその後10年あまり仲良くしていました。ある日モモと姿形がそっくりな犬が家の玄関前に突然現れました。私に懐かしそうに鼻を押し付け、私の手をなめてきた犬は、貰われていったハナであったと思います。たった一度の面会であったので本当ところはよくわかりません。
先日クリニックに、3歳の私がちくわを買いに行ったスーパーを経営されていた奥様が受診されました。スーパーのこと、その奥様の夫様の顔など急に思い出しました。同時に古い記憶がよみがえりました。
いろんなことを思い出したので書いてみました。スーパーの向かいの自転車屋さんは当時とよく似た姿で今もあります。うちはクリニックに変わってしまいましたが、行基町には変わらないものもあります。散髪屋や郵便局は3歳の頃に私が見た姿のそのままかと思います。うちのクリニックの建物はこれから何年存在できるのだろうか。一日でも長くできるように願います。
また伊丹の思い出をこれから書き足していきたいと思います。